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【読書】「人形館の殺人」を読みました

綾辻行人

初刊1989年講談社ノベルス

新装改定版2010年講談社 496P

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【目次】

 

1.あらすじ

父が飛龍想一に遺した京都の屋敷――顔のないマネキン人形が邸内各所に佇(たたず)む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読み(カウントダウン)はすでに始まっていた!? シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第4の「館」、新装改訂版でここに。

引用:

人形館の殺人 (講談社文庫) | 綾辻 行人 |本 | 通販 | Amazon

 

2.読書感想(ネタバレあり)

読んだ方にしかわからない表現を選んでいますがネタバレありです。

館シリーズ四作目です。感想を書いていないですが、第一作目も読めたので一~四作目まで読むことができました。

 

今作は基本的に主人公・飛龍想一の一人称で物語が語られ、時折、想一を脅かす存在である第三者視点が挟まれる形でした。

この第三者の登場の仕方が眠りから目覚める描写だった、想一自身や館の形状を熟知していないと行えない行動をとっていたことから、早々に、第三者は存在せず想一が多重人格のような状態で自ら引き起こしている現象なのかなと想像がつきました。殺人が起こり始めてからも、状況的に想一以外に犯行が可能な人物がいないという事態が続いたため、序盤からずっと主人公=犯人の物語として読みました。

 

最後、館シリーズの名探偵役・島田までがまさかミスリードの一部になっていたことには気がつかなかったので驚きました。確かに電話番号はどこから調べてきたんだと最初は違和感を持ったのですが物語が進むうちその違和感は失念してしまいました。また、想一と仲良くなってくれた大学院生・希早子が襲われた際に島田が助けに入るシーン、島田が緑影荘の住民達に声をかけてまわるシーンも、これまでの館シリーズで島田の突飛な行動やコミカルさを読んでいたため、違和感を見過ごしてしまいました。

 

私は状況証拠のみで主人公=犯人と考えましたが結末の答え合わせでちゃんと状況証拠以外にも伏線の描写があったことが示され、読み返しが楽しかったです。想一は蔵のマネキンの異常を母に相談するか悩んで心配をかけないために相談しないという選択をしましたが、母は想一の症状に勘づける状況の立場だったので相談していれば違う未来がありそうだなと思いました。

   

 

3.真相の想像

想一が子供時代に死なせてしまった男の子・マサシゲ君は架場久重の兄だったのか?という問題、最終的に明言はされませんでしたが、私はそうだったのではないかと思いました。

想一が断片的に過去の風景をフラッシュバックするシーンでは架場の『茶色いと云うより鳶色の瞳』の描写が挟まれる点とエピローグ前の含みのある一文からもそのように想像できますし、「男の子の名前はマサシゲ、架場の兄であった」と発言するのが島田で、その島田は想一自身であったことから、想一自らが思い出したという捉え方もできそうです。

また、フラッシュバックのシーンは本文中にいくつかありますが『二つの線(ママの記憶)』と『二つの影(マサシゲ君の記憶)』の記憶が片方だけだったり、両方が混ざりあったりしながら描かれます。架場との会話中でフラッシュバックするシーンは三ヵ所ありましたが、すべてのシーンで、『二つの影』の記憶が含まれていること、フラッシュバックの直前に架場の目を見る、または目を合わせる描写があることからも、架場にマサシゲ君の面影を重ねて記憶が呼び起こされているのではないかと思いました。

 

エピローグ前に希早子が、「どうして架場はもっと積極的に手を打とうとしなかったのか」と疑問を持つ場面がありますが、架場は想一から相談を受けている途中で想一の症状に気がつき、想一が破滅する未来を望んであえて手を打たなかったのではないかと思いました。

 

 

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